ツクルとコワス

【前編】作るために壊す、ダンボールハウス。

さばちゃん

幼い頃の理想と現実、そこには理想を超える楽しさがあった。

これはわたしの幼い頃の微かで確かな記憶のお話である。

こちらに向かって「これ以上眉間にシワを寄せることができるか?! 」
と、言わんばかりの笑顔を向けている女の子が当時5才のわたし、と、父。

 

大変唐突ではありますが、皆さんは幼かった頃に 「こんなのが家に欲しい!」 なんて思ったことはないだろうか?

 

 

わたしは心底欲しかったし、 ジャングルジムがある友達の家なんて眩しすぎて直視できないほど羨ましかった。

しかし、我が家にたまに出現するのは、コレ。

理想の欲求とは反対に日曜日しか休みのない父が、たまに作ってくれるコレが最高に好きだった。
ちなみに父は何でも屋さんみたいなとりあえず最強な人だ。

 

 

そんな最強な父はカッターを使うのが上手で不思議なくらいまっすぐにダンボールが切れる。
しかも、ぴったりと養生テープを貼ることができる。今となればそんなことわたしにだってできることだ。

 

当時のわたしに声が届くのならば「数年後にはできるようになるよ」と。

 

その言葉を聞いたとしても、5才のわたしにとって父の見事な作業工程はやっぱり憧れであり、 特別な時間だっただろう。
あの頃の言葉をまだ知らないわたしに言わせてみれば「わくわく」とか、かな?

 

我が家のダンボールハウスはとてもしっかりとしていて住み心地がいい。

 

ちなみにそのダンボールハウスが設置されている場所は、6畳に家族6人が暮らす激せま団地。
その貴重な6畳という空間に冷蔵庫やらテーブルやらテレビが置いてある。
そんなわけでダンボールハウスに入居して2日も経てば、母から通告がくる。

 

「そろそろ捨てるよ」

 

そう、我が家にとってダンボールハウスは大きすぎたのだ。
ちょっとやそっとじゃ壊れる気配のなかったダンボールハウスも、あっけなく意図も簡単にバラバラに壊されていく。
その時のリアルな感情は覚えていない。

 

でも多分、壊すのは嫌だった。
けど多分、さみしくはなかった。

 

父がカッターを器用に使い、養生テープを巧みに貼り合わせ、「ここの窓はちゃんと閉まるようにしてね!」 なんて注文しながらダンボールハウスを作って過ごす日曜日がまた来ることを幼いながら分かっていたに違いない。

2019.04.26 tue

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  • さばちゃん

人を幸せにできるデザイン、人のためになるアートを目指しているクリエイター。基本的に何でも「おもしろい」から入るタイプ。岡山県出身。物事の奥深さにどっぷりハマっているさばちゃんです◎

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岡山生まれ。
写真屋さん→ニート→デザイン事務所→まさかの写真で独立→仕事めちゃ忙しい→悩む→40歳になってやりたいことやる会社「株式会社おじさん」設立する→ノリでWEBメディア「ヒゲとメガネ」始める→飲食経験ゼロで、クリエイターが集まる「BARおじさん」作る→超個人的な出版社 おじさん研究所を設立→最近ブロガーじゃね?って言われる。←いまここ。
・ファイブグラフィックス 代表
・株式会社おじさん 代表取締役
・BAR おじさん研究所 オーナー所長
・出版社 おじさん研究所 代表

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岡山県のメーカー、タグチ工業所属で広報を担当している。やけに建設機械の先端で使用されるアタッチメント、と呼ばれる機械に詳しい。だが、理系ではない。

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岡山の制作会社でグラフィック・WEBサイトのデザインをしている傍らでミニチュアを愛でミニチュアを作る女。

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